福島県西部、会津盆地のほぼ中央に位置する会津若松市は、2013年に「スマートシティ会津若松」を掲げ、ヘルスケア、防災、教育、決済、モビリティ等、多彩な分野で、市民・企業・大学・行政が一体となった次世代社会の創造を目指しています。その中心であるスマートシティAiCTには、多くの企業が集まり、地域課題の解決等に向けた多様なビジネスを展開しています。
今回は、会津若松市と東京に拠点を構える株式会社デザイニウムを訪れ、ICTオフィスならではの魅力や取り組み等について伺いました。
デザイニウムは福島県会津若松市と東京に拠点を置くテクノロジーとデザインの企業です。東京オフィスは「新しい体験」をコンセプトに、AR・MRなどのXRを用いたプロトタイピングを行っています。会津オフィスでは地域課題をテクノロジーを活用して変革するサービスを提供しています。例えば、除雪や住民の移動などの利便性を向上させるためのプロダクト。地域課題は、根本的な解決までは難しくてもテクノロジーで持続可能になる要素が多いと感じています。また全国に共通する課題も多く、横展開による事業の可能性も大きいと考えています。
私たちの会社は、私が会津大学の学生だった時に数人のメンバーと一緒に作った会社です。起業後は会津大学前のオフィスに入居していて、そこには大学OBの会社や大学関連ベンチャー企業が集まっていたんです。ビジネスの相談や情報共有、雑談などコミュニケーションが非常に取りやすく快適でした。手狭になり離れてしまいましたが、やはりいろんな企業と距離の近いオフィス環境がいいなと感じていました。その後こちらの計画の話を聞き、都内の企業のサテライトオフィスや地元の企業が入居するということで開所と同時に入居し今に至ります。
望んでいた働き方や企業間のコラボレーションができています。様々な企業がオープンな雰囲気で同じフロアに入居していて、大企業も地元企業も関係なく気軽にコミュニケーションができます。我々のようなIT企業、エネルギー関係の企業や様々な事業会社、機器メーカー…初めから距離が近く接点があるというのは大きいですね。「ちょっと今お話いいですか?」というようなフランクさでコミュニケーションが取れます。
例えば2階にはエプソンさんが入居していて、コロナ期に一緒にリモート学習システムを開発しました。プリンタを家庭に貸し出し、学校や塾の先生がクラウド経由でデータ配信し、自宅で学習を行った結果を返信するというシステムです。フットワークの軽さでスピーディーな連携が取れたと思います。
私たちは令和元年から令和3年にわたり、「ICTオフィス立地促進事業費補助金(運営費・初期費用補助)」を活用しています。この助成金は、福島県内に事業所等を新設するICT企業等に、事業所設置に係る経費の一部を補助していただけるという内容です。入居の際の基本的な工事やその後の環境整備・維持に充当しています。スマートシティAiCTは充実した環境ですので入居にある程度費用が必要です。ただ前段でもお話したように、複数の企業が集合している施設である魅力やメリットが大きいと感じます。また、自社スペースを企業ごとに自由にカスタマイズしているので、社員のモチベーションにも繋がっているのではないでしょうか。
ICTオフィスを利用すると、東京など首都圏で働いている方が地方に来た時に環境によるギャップを感じにくいのではないかと感じます。首都圏と遜色ない施設を利用できて、居住地としては地方都市の良さもあります。地方のサテライトオフィスで働くことを選択肢に入れやすくなると思います。
スマートシティAiCTは、企業間の連携・コラボレーションがしやすく、オープンイノベーションが生まれやすい場所になっているというのは確実にあります。私たちも今後もさらに他の企業と連携したいと考えています。これまで身近な課題からスタートしてきましたが、観光、食・農業、エネルギーといった、地域にとっても日本全体にとっても重要な領域にも関心があります。
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