福島県西部、会津盆地のほぼ中央に位置する会津若松市は、2013年に「スマートシティ会津若松」を掲げ、環境や健康・福祉、教育等、多彩な分野で、市民・企業・大学・行政が一体となった次世代社会の創造を目指しています。そんな会津若松市を象徴する鶴ヶ城の北側に位置する木目が美しい建物がスマートシティAiCTです。ここには、多くの企業が集まり、地域課題の解決等に向けた多様なビジネスを展開しています。今回は、郡山市に本社を持つ株式会社エフコムのR&D戦略室を訪れ、ICTオフィスの魅力や取り組み等について伺いました。
株式会社エフコムは、ICTを活用した企画、サービスを提供する会社です。100名以上のシステムエンジニアと2つのデータセンターを備え、官公庁や学校、民間企業等のシステムや情報機器等を、導入企画から設計に始まり、構築・導入、運用・保守、そして、移転・撤去、最後に廃棄するまでの全工程を一括で提供しています。国策として「Society5.0」が推進される中、地域のためにデジタルソリューションを提供していくことが福島県の企業として責務だと考えています。地域が抱える様々な課題をデジタルの力で解決する取り組みを進めています。
スマートシティAiCTは2019年4月に供用が開始されましたが、弊社は計画段階から関わってきました。デジタルで地域をよくすることを理念とする弊社の考えと、会津若松市が2013年から目指してきた「スマートシティ構想」とが合致していたのです。また、国内初のコンピュータ理工学部単科大学である会津大学のお膝元でもあります。この地なら、多彩な企業、人材と共創してDXを広げ、地域に還元していけると考えました。実際、スマートシティAiCTには80社を超える企業が所属し、地域の魅力向上や課題解決に取り組んでいます。
フリースペースがあり、気軽に意見交換を行える環境があります。入居企業間の距離がとても近いです。また、一般社団法人AiCTコンソーシアムという入居企業の連携組織を結成し、ワーキンググループごとに地域の課題と向き合っています。行政のオープンデータプラットフォームもそのひとつ。行政には住民の多様なデータが集まりますが、従来は部署ごとに縦割りで管理され、活用シーンは限定的でした。それがAIの発達等により異分野の情報を掛け合わせ、新たな価値を生み出せるようになっています。例えば、病院の利用履歴と交通機関の乗車履歴から健康づくりのヒントを見出すような取り組みです。社会を変える可能性にあふれた刺激的な環境です。
私たちでは二つの補助金を活用しています。ひとつめのICTオフィス立地促進事業費補助金では、会津オフィス開設時の人材獲得に役立て、円滑な事業展開につながっています。もうひとつの先端ICT技術開発・先進モデル創出事業費補助金では、鳥獣害対策に関するソフトウェア開発に活用しています。猟友会の高齢化が進み、里山の管理が課題となる中、福島大学農学群食農学類の望月翔太准教授の監修のもと、熊やイノシシ、鹿、猿等の出没情報を可視化して、見廻りや罠の設置を効率化させるアプリ「獣マップ」を開発しました。2019年から企画、開発、実証を重ね、ついに製品化。人口減少、高齢化が進む里山環境の保全に貢献していきます。
ICTオフィスには、業種、業態を問わず、さまざまな目的、目標をもった企業が集まります。人口が減少する中、いかに生産性を向上し、地方創生につなげるかという面で同じベクトルを持つ企業も多いです。1社だけの限られたリソースでは、社会の急激な変化に対応するのは容易ではありませんが、複数の企業がアイデアを出し合えば、スピード感をもって対応することができ、新たな発想も生まれやすくなります。福島県は課題先進地と言われます。この地の山積する課題に、私たちはこれからも志を持つ仲間たちと向き合っていきます。みなさんと一緒に仕事ができる日を楽しみにしています。
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