水稲有機栽培技術の実際

福島県農業総合センター技術移転科

はじめに
 福島県では平成18年度より20年まで、当センター有機ほ場で水稲有機栽培に関する試験研究の成果を取り入れながら、技術実証をおこなってきました。これらは「有機栽培の手引き」としてまとめられて平成21年に発行されました。
 このページは平成18年から20年度に実施した各年度の栽培状況を、実証ほの生育状況として随時更新されていたものをそのまま載せてあります。なお、記述は経時的に逆、すなわち10月の稲刈りが最初で、3月のぼかし肥料作成等が最後となっています。


平成19年度の様子はこちら
平成18年度の様子はこちら

水稲ふくしま型有機栽培技術実証ほ 平成20年度計画(平成20年6月2日掲載)
 PDF形式のファイルで提供します。


技術実証ほのねらい
 地域で発生する有機性資源を循環利用し、自然環境に配慮した有機栽培を行う。
 本年は農業総合センターで開発した種々の有機栽培技術(レンゲ鋤込み、自作ぼかし育苗+ぼかし育苗追肥技術、有機性資源による抑草、アゼ波設置による初期害虫防除)を組み立て実証し、現地での有機栽培普及のための検証を行う。


稲刈り
10月9日 稲刈り(4条刈りコンバイン 0.8時間/20a)

稲刈り作業 レンゲの出芽状況
稲刈り作業
作業開始時は晴れ間が出ていましたが、早朝降雨があり無風であったため、ブロアを使って露払いを行い、刈取りを行いました。刈取時の籾の黄化率は95%で、収量は480kg/10aを見込みます。
レンゲの出芽状況(10月10日撮影)
9月16日に立毛(りつもう)中に播種したレンゲは、適度に降雨もあり、昨年より苗立ちが多く、生育も進んでいます。

成熟期調査(9月9日)

稈長 穂長 穂数 推定籾数
cm cm 本/株 本/u 粒/穂 粒/u
90.1 19.3 16.5 288 115 33,206

出穂状況

出穂始め 出穂期 出穂揃い
8月12日 8月15日 8月18日

生育データ
ふくしま型有機栽培技術実証ほ(水稲)の生育データ(平成20年8月12日現在)

移植後日数
(日)

調査日
(月/日)

草丈
(cm)

茎数

葉色
(SPAD値)

葉齢
(枚)

(本/株)

(本/u)

0

5/26

20.3

24.0

4.4

+15 6/10 22.6 3.6 62 21.5 5.9
+25 6/20 32.8 6.9 120 29.7 7.8
+35 6/30 38.4 12.7 222 38.3 9.5
+45 7/10 53.6 20.5 353 38.8 11.4
+57 7/22 72.1 20.3 355 34.3 13.0
+66 7/31 85.2 19.3 337 32.7 14.1
+77 8/11

98.6

18.5

323

28.1

14.9

生育状況

9月10日の生育の様子 レンゲ播種後の様子
9月10日の生育の様子
出穂後26日目で、糊熟期の後半となっています。成熟期調査では、稈長は90cm、穂数は288本/u(前年比188%)、籾数は115粒/穂(前年比109%)で旺盛な生育となっています。10月上旬に刈取り予定です。
レンゲ播種後の様子(9月16日撮影)
昨年に続き、翌年の緑肥作物としてレンゲ種子を9月16日に動力散粉機で播種しました。昨年は播種後の乾燥で、出芽数が劣ったため、昨年より1kg増量し、播種量は3kg/10aとしました。


8月11日の生育の様子
草丈99cm(前年比123%)、茎数は323本/u(前年比198%)と旺盛な生育となっています。穂ばらみ期末期で、走り穂が出始めました。中干しを8月4日に終了し、現在、間断かんがい実施中です。

田んぼの番人(ニホンアマガエル 8月11日撮影)
有機栽培に限らず水田で見られますが、オタマジャクシから変態したばかりの幼体(仔ガエル)です。イネミズゾウムシやイネツトムシ、ツマグロヨコバイなど主要害虫を食べてくれます。

7月31日の生育の様子 溝切り作業
7月31日の生育の様子
草丈85cm、茎数19.3本/株です。減数分裂期となっています。7月23日より中干しを開始しました。また、葉いもちがわずかに確認されました。
溝切り作業(7月24日撮影)
乗用型の溝切り機で、溝切り作業を行いました。水田周囲の1条目と2条目の間と植付方向に3本の溝切り作業ですが、20分ほどで終了しました。
7月22日の生育の様子 コナギの残草
7月22日の生育の様子
草丈72cm、茎数は20.3本/株です。最高分げつ期を過ぎ、幼穂形成期となっています。近日中に中干しと溝切りを行います。
コナギの残草(7月22日撮影)
屑大豆と米糠ペレットの散布や深水管理、機械除草を行いましたが、ミズアオイ科のコナギの残草がやや目立っています。
7月10日の生育の様子 アカトンボ羽化後の抜け殻
7月10日の生育の様子
草丈54cm、茎数は20.5本/株とまずまずの生育量です。水深10cmで深水管理中です。
アカトンボ羽化後の抜け殻(7月10日撮影)
有機ほ場で、アカトンボ幼虫(ヤゴ)の抜け殻が散見できるようになりました。
6月30日の生育の様子
茎数が増え、葉色が濃くなってきました。水深8cmで深水管理中です。

機械除草後の様子(6月30日撮影)
6月26日に乗用型除草機を使用しました。株元の雑草と葉齢の進んだコナギの残草がみられますが、全体の7割程度は除草できたと思われます。アゼナ類は水面に浮かんでいるのを多く確認できます。

6月20日の生育の様子
6月14日頃より、5号分げつ(主茎第5葉から分枝)と6号分げつ(主茎第6葉からの分枝)が6月14日頃から確認できるようになりました。また、葉色も徐々に濃くなってきました。
雑草がいっぱい(6月20日撮影)
有機ほ場は、3年目に雑草が多くなるといわれますが、昨年までと違いアゼナやコナギ、ホタルイ、ノビエなど多く発生しています。6月26日に乗用型除草機を使う予定です。
6月10日の生育の様子 ヒメモノアラガイ
6月10日の生育の様子
水深5cmで深水管理中です。
田植え後の低温の影響で、植え傷みがみられましたが、徐々に回復してきました。
ヒメモノアラガイ(6月10日撮影)
アゼ波シート設置により、イネミズゾウムシはほぼ完璧に防除できています。稲株の水際に、ヒメモノアラガイという巻貝が多くみられました。稲には無害のようです。

追肥作業

7月16日 追肥散布 (動力散粉機 0.5時間/10a)

追肥作業の様子(7月16日撮影)
動力散粉機で、ペレット化したぼかし肥料の追肥作業を行いました。窒素成分2kg/10aで、現物散布量は42kg/10aです。

ぼかし肥料ペレット(7月16日撮影)
米糠ペレット形成機で、自作ぼかし(米糠+油粕)ペレットを作成しました。散布中のつまりはなく、作業はスムーズでした。

抑草作業
8月6日 手取り除草 (1.5時間×5人/20a)

手取り除草の様子(8月6日撮影)
中干しを完了し土壌を固化できたので、手取り除草を行いました。アゼナ類は無視し、コナギを中心にホタルイ、ノビエ、ガマ等を手取りしました。

手取り除草後の様子(8月11日撮影)
アゼナ類や取り残しのコナギ類などわずかに見られますが、丈の長いノビエやガマなどの雑草などはほぼ見られなくなりました。

6月26日 機械除草 (乗用型除草機 1.0時間/20a)

機械除草の様子(6月26日撮影)
移植後31日目に1回目の機械除草を乗用型の除草機にて、水深4cmで行いました。

機械除草直後の様子(6月26日撮影)
6条型田植機の走行どおりに乗用型除草機で作業を行ったため、稲株の損傷は全体的にはわずかですが、枕地については損傷が目立ちます。

・5月30日 屑大豆散布       50kg/10a(動力散粉機 0.8時間/20a)
・5月30日 米ぬかペレット散布   50kg/10a(動力散粉機 0.8時間/20a)

米糠ペレットの散布作業 米糠ペレットと屑大豆の散布直後の様子
米糠ペレットの散布作業(5月30日撮影)
畦畔からの作業で全て散布でしました。
米糠ペレットと屑大豆の散布直後の様子
大豆は沈んでいますが、米糠ペレットは溶け出します。

移植作業
・ 5月26日 田植え作業(6条植え田植機0.7時間/20a)
・ あぜ波シート設置作業(0.5時間/20a 4人組作業)

田植え あぜ波シート設置作業
田植え(5月26日撮影)
風もなく、好天の中での田植え作業となりました。
あぜ波シート設置作業(5月26日撮影)
イネミズゾウムシ対策のため、田植え直後に巾30cmのあぜ波シートを設置しました。

本田管理
・ 4月14日 堆肥散布2t/10a、レンゲ鋤込み30kg/10a
・ 5月12日 基肥散布作業((動力散布機および肥料散布機)
・ 5月14日 荒代かき
・ 5月23日 本代かき

堆肥散布後の堆肥と緑肥(レンゲ)の鋤込み作業 ぼかし肥料の本田散布作業
堆肥散布後の堆肥と緑肥(レンゲ)の鋤込み作業
(4月14日撮影)
ぼかし肥料の本田散布作業(5月12日撮影)

育苗管理作業
・ 4月17日 入水開始(プール育苗)
・ 5月2日  ぼかし肥料育苗追肥(2.5葉) 現物施用量28g/箱(N:成分1.5g/箱)
・ 5月23日 落水作業(プール育苗)

プール育苗開始直後の様子 ぼかし肥料の育苗追肥作業の様子
プール育苗開始直後の様子(4月17日撮影) ぼかし肥料の育苗追肥作業の様子(5月2日撮影)

播種作業
・4月10日 培土混合作業 焼土216kg、ピートモス28.8kg、ぼかし肥料7.6kgを肥料混合機で混合
        同日、箱当たり60gの設定で播種。

培土混合作業 播種作業
培土混合作業(平成20年4月10日撮影)
カビの発生を抑えるため、培土の混合作業は播種直前に行いました。
播種作業(平成20年4月10日撮影)
床土詰めと播種作業を一貫作業で行いましたが、給水や覆土など支障なく行えました。

ぼかし肥料作成
・3月4日 米糠24kg、油粕18kg、魚粕18kgを混合、加水

育苗用ぼかし肥料の作成作業 発酵中のぼかし肥料
育苗用ぼかし肥料の作成作業(撮影平成20年3月4日)  発酵中のぼかし肥料(撮影平成20年3月11日)

耕種概要
供試品種 コシヒカリ(30a)
育苗管理
(1)種子予措 温湯種子消毒 3月28日(60℃10分、湯芽工房YS200L使用)
(2)浸   種 3月29日〜4月8日(10日間)
(3)催   芽 4月9日 28℃ 20時間
(4)播   種 4月10日(乾燥籾60g/箱)、自作ぼかし(米糠4:油粕3:魚粕3)培土使用
(5)育   苗 加温育苗(育苗機)、プール育苗 4月18日〜5月23日

本田管理
(1)堆肥等散布 4月14日(マニュアスプレッダ) 牛ふん堆肥 2t/10a、レンゲ鋤込み 乾物30kg/10a
(2)耕     起 4月14日
(3)施    肥 
          ア 基肥散布:5月12日、球状ようりん:50kg/10a(動力散布機および肥料散布機)
            ぼかし肥料区 自作ぼかし(米糠5:油粕5)102kg/10a(成分kg/10a N:5、P2O5:6、K2O:2)
            対 照 区 有機アグレット666特号 83kg/10a(成分N:5、P2O5:5、K2O:5)
イ 追肥散布:7月中旬
ぼかし肥料区 自作ぼかし 61kg/10a(成分kg/10a N:3、P2O5:3.5、K2O:1)
対 照 区 有機アグレット666特号 50kg/10a(成分kg/10a N:3、P2O5:3、K2O:3)
(4)代  か  き  荒代5月14日、植代5月23日
(5)田 植 え  5月26日(機械移植)、栽植密度:30cm×18cm 18.5株/u
(6)雑 草 防 除  深水管理:5月26日〜7月中旬、屑大豆および米糠ペレット散布:5月29日(動力散布機)  各50kg/10a
          機械除草(乗用型除草機、6月中旬)
(7)病害虫防除 アゼ波シートによる初期害虫(イネミズゾウムジ)防除